ご遺体を納める「棺(ひつぎ)」は、大切な方が最期を迎えたときに横たわるベッドのような存在です。しかし、葬儀までの慌ただしい時間の中で余裕を持って選ぶことは難しいため、以前は葬儀社にお任せし、打ち合わせの段階で決まることが多くありました。
しかし近年では、「自分が入るものだから納得して選びたい」「大切な家族を温かく見送りたい」といったお気持ちから、生前の段階から棺を選ばれる方も増えてきています。
今回は、棺の選び方や種類、費用相場について分かりやすくお話しいたします。
棺の選択や準備方法
自分で棺を準備したり選択したりする場合、葬儀社で実物を見学する方法が一般的です。
また、棺を専門に扱う販売業者やメーカーに直接問い合わせて資料を請求することもできます。中にはオーダーメイドや受注生産しか受け付けていないメーカーもあり、その場合は事前に予約や購入をしておくことになります。
棺はインターネットでも購入できる
以前は葬儀社に用意してもらうことが当たり前でしたが、最近ではインターネット上でも購入できるようになりました。特に、大手通販サイトや葬祭用具の専門店などは多数の製品を取り扱っており、オンラインショップを持っている棺メーカーから直接購入することも可能です。
棺の種類
近年では葬儀スタイルの多様化に伴い、さまざまな種類の棺が登場しています。
素材についても、以前は木製が一般的でしたが、現在では環境に配慮した素材や、ご遺体をきれいな状態で保てるような素材も使われるようになりました。
木棺(もっかん)
現在、日本で最も一般的なのが「木棺」です。合板などの手頃なものから、ヒノキや桐(きり)などの高級木材まで多種多様な素材が使用されています。近年では海外の木材を活用するメーカーも登場しています。基本的には木目を活かしたデザインが多いですが、合板などを使用する場合は木目調のシートを張り付けたり、彫刻を施したりすることもあります。
布棺(ぬのかん)
木棺の表面に布を張ったものを「布棺」と呼びます。見た目が柔らかい雰囲気になり、生花祭壇ともよく調和するため女性の葬儀でよく選ばれますが、男性向けの落ち着いた生地や柄も豊富に用意されています。また、木棺よりもデザインの幅が広く、花柄のプリントや繊細な刺繍なども施すことができるため、最近では有名デザイナーが手がけたものや、故人様の思い出の着物を使ったオリジナルデザインも登場しています。
エコ棺
「エコ棺」とは、段ボールや間伐材(森林の成長過程で間引きされた木材)などの素材を使用して作られた棺のことです。火葬の際に有害物質を排出せず、資源を無駄なく再利用できるため、環境面に配慮した棺として注目されています。基本的には3層構造で作られているため、軽さと耐久性を兼ね備えている点も特徴です。
エンバー棺
エンバーミングとは、ご遺体に防腐・消毒などの処置を施し、傷めることなく1〜2週間程度保存できるようにする技術のことです。このエンバーミングを施すご遺体を納めることを目的とした棺を「エンバー棺」と呼び、一般的にはアクリル素材で作られています。近年では葬儀場や火葬場の混雑により、葬儀を行うまでに時間がかかる場合も多いため、ご遺体を長期間良好な状態で保てるエンバー棺の需要が高まっています。
棺の費用相場
自分やご家族のための棺を選ぶ機会は人生で何度もありませんので、費用相場はあまり知られていません。素材やデザイン別に大まかな相場をご紹介しますので、検討されている方はぜひ参考にしてください。
木棺の費用相場
木棺は最も一般的なタイプのため、価格帯も幅広く用意されています。例えば、ベニヤを使用した合板の棺なら3万〜5万円台から購入できますが、ヒノキや桐のような高級木材を使用する場合は15万円以上となります。また、継ぎ目のない一枚板(無垢材)を使用した棺だと100万円以上するものもありますし、彫刻の有無や金具の仕様によっても差額が発生します。
布棺(布張棺)の費用相場
布棺の相場は木棺と大きく変わらず、5万円台から購入できます。布の材質や刺繍の細かさなどによって価格は変わりますが、木棺の最高級品ほど高額になることは少なく、高いものでも30万〜40万円程度です。また、故人様の着物を再利用して棺を覆う布を作ってくれるメーカーもあり、その場合の作業費用は5万円前後が相場とされています。
エコ棺の費用相場
強化段ボールや間伐材を再利用して作られるため、相場としては10万〜20万円程度に収まることが多くなっています。まだ取り扱っている業者がそれほど多くないため、今後普及が進むことで相場が下がっていく可能性も考えられます。
エンバー棺の費用相場
エンバー棺はアクリル素材を使用する関係で、15万〜40万円とやや高めの相場になっています。エンバーミングを施すご遺体を納めるため、密閉性や遮光性にこだわる必要があり、製作の手間が費用に反映されています。エコ棺と同様にまだ一般化の途上であるため、取扱業者は比較的限られています。
棺を選ぶ時の注意点
棺を選択・購入する際には、いくつかの重要な確認ポイントがあります。
棺のサイズ
棺を用意してもご遺体が収まらないと大変ですので、縦横のサイズは必ず確認しましょう。棺の一般的な長さは180cmですが、棺に入る際はつま先が伸びた状態になるため、実際の身長に10〜15cmほど足した長さを満たしている必要があります。横幅については53〜56cmが一般的ですが、体格に合わせて60cm程度の横幅が必要になる場合もあります。
予算
費用を抑えたい場合は木棺や布棺のスタンダードなものが向いていますが、こだわりや個性を反映させたい場合はカスタマイズの手間がかかるため金額も高くなります。棺は人生の最期に身を委ねる大切な場所ですので、ご予算とご希望のバランスを見極めながら、納得のいくものをお選びいただくのが良いでしょう。
棺の保管場所
生前にご自身で棺を購入する場合、葬儀を行うまでの間は自宅などで保管しておく必要があります。組み立て式であればそれほど場所を取りませんが、完成形で届くものはかなりの大きさになります。自宅の間取りや保管スペースによっては置くことが難しい場合もありますので、そうした際は保管サービスや倉庫の活用などを検討しておくと安心です。